涙の海
枯れる事の無い涙の海に溺れた夏
憶えているのは包まれる様な波音
君を失った世界が現実という事実
君のいた時間は全て幻想だったの
深く碧い海底で巡り逢う夢を見て
目覚めるといつも頬は濡れていた
太陽の輝きも情熱を増す煌めきも
夏が帯びる稀有な哀しさは拭えず
街中で人目を気にする余裕も無く
溢れた涙と記憶、君の匂い、感触
思えば出逢いこそ頂点だったんだ
何もかもが完璧過ぎていた夜から
どんな瞬間も互いの心を感じ合い
この世にある幸福の塊を手にした
どちらからとかいつからかなんて
答え合わせをしても解けないんだ
ただあの夏の夜に音がしたんだよ
ハッキリと、鮮やかに壊れる音が
世界中で一番聴きたくなかった音
方向感覚も五感も全て奪われては
それ以上に大切な何かを失って…
また夏が当たり前に巡って来たね
あれから大きく道を踏み外した君
君の堕落と比例して私も崩壊した
いたたまれないのは思い出の二人
彼らはこんな未来を望んでいたか
考えるのは無意味故に歩き続ける
私は私を、君は君を、生き抜いて
消せなくとも忘れずには歩けない
ただ今は、少し涙の海に沈みたい
訪れなかった架空の未来を想って
いつか全て許されると願いながら
もう二度と逢えない君を浮かべて
(2014.July)
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