また逢えるのなら

…それからの僕はと言うと、
良く言っても、もぬけの殻、
悪く言えば生きる屍だった。

世界が色を失うってのはこれか。
君を失って世界は灰色になった。
何もかもが、霧がかって見える。

もともと食は細い方だったが、
何を口に入れても味がしない。
全て無味無臭。灰色以下だな。
あの頃を夢に見るのが怖くて
なかなか睡眠もままならずに。

気を使って誘ってくれる友人達、
ありがたいが心も足取りも重く。
こんな状態でアルコールなんて
完全コントロール効かないだろ。

二人で歩いた道は避ける様にした。
なるべく記憶を遠ざけようとした。
同時に忘れたくない反発も生まれ、
僕は僕の事さえも色んな角度から
疑って責めて、自分に疲れ果てた。

そもそも出逢った事が悲劇だった。
ハッピーエンドなんて到底不可能。
なのに、惹かれ合う引力に負けた。
鮮やかな敗北と束の間の高揚感が、
僕という人格さえ狂わせていった。

貼り付けた様な笑顔でこなす仕事。
忙しくする事で無心になるなんて
自己啓発本はみんなインチキだな。

何の為のこの人生なのかって問い。
誰の為のこの人生なのかって病み。
馬鹿より馬鹿みたいな自問自答だ。
負のループから抜け出す方法は…。

何日か過ぎ、何週間か過ぎ、何ヶ月
もう彼女と最後に会った日から…。
一歩も動けず、季節だけが移り行く。

守れなかった約束達が、空を切る。
穏やかな気温がそっと背中を押す。
前に進むとか強くなるってよりも、
全てを受け入れて歩いてみようか。

思い出の曲が流れ出した。
ずっと大切なままで良い。
嘘なんて何一つ無かった。

男のくせに、情けないな。
見上げた空は淡い春色で、
泪が視界と世界を癒して。

また逢えるのなら。
また笑える日まで。
僕は僕のままで…。

(2014.March)

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