両極端

彼女は深い溜め息を繰り返していた
地球の重力に委ねる様な溜め息を

ダメだ、と今度は深呼吸をしてみる
鏡の中の自分に問い掛けても無意味だ

彼に与えられる両極端な感情
それらが非日常的な振り幅である事

会っている時の充足感や高揚感
まるで世界が自分の為に回っているのかと錯覚する程の幸福感に酔いしれる

しかし彼と離れた後のどうしようもない虚しさややるせなさ ある種の絶望
行き場のない想いが右往左往し続ける

何度も二人の人間関係の舵を取るのは自分にしようと試みた
何も赦すものかと強く言い聞かせても
その誓いは笑顔一つで散り散りになる

全て分かっている仕組みの筈なのに

情け無い自分も彼も嫌いにはなれない
なれるものならとっくになっていたわ

心の中で彼女は独り言と戦う
勿論彼はそんな戦いを知る由もなく
また起爆剤の様に突如現れる

永遠のループはいつまで?いつから?
太古の昔から繰り返していたのかもと
少し抗えない理由を見つけ微笑んだ

時々思う 彼の与えるこの両極端な感情こそが人生の醍醐味なのかもと
迷走こそ答えだって事にしておこう

彼女はお気に入りの曲を聴きテンションを調節しながら歩き出した
目的地なんて決めなくていい
辿り着いた場所が目的だった事にする

結局何処にいて何をしていても彼女の中から彼は消えないという七不思議

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