forgiveness

記憶の海に紛れえぬ眼差しが、
蘇る。淡い誓いの囁きが蘇る。

尊敬と軽蔑を。羨望と焦燥を。
全て見せてくれたその生き様。
愛という一言では纏まらない。

失われた時間を一人、虚ろに想う。
幾度も酷い嗚咽と醜い慟哭に塗れ。
その瞳に、もう私は映らなかった。

くたびれた魂すり減らして、
戦場に立つ君は笑っていた。
逞しく勇ましく振り向かず、
諦めた様に斬り続けていた。

誰よりも人間らしくあろうと、
誰よりも人の心を無くそうと、
強く決めて、切り開く後ろ姿。
いつも傷だらけだったのにね。

眠りについても痙攣して、
言葉にはならない呻き声。
世界は君を狂わせていた。

刹那に見た灯火の様な永遠。
先に崩壊させたのはどちら。

私は私のままでしかなくて…。
君は君のままでいるだろうか。
同じ空の下、二度と重ならない。

空っぽの心に染み入る優しい何かが
私をこの都会に踏み留まらせるなら
きっと全て間違いではなかったの。

戦う君が朽ちた時は私が一番哀しむ。
だからそう、その勇姿を遠くから。

同じ夢を見る事は到底不可能だった。
最初から解って選んだ自分達を責めないで。

出逢ってしまった定めを赦して。
果たされなかった約束を赦して。
幻想と共に離れた二人を赦して。

愛しい過去を灰色にはしないよ。

(2014.February)

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