Answer
俺は分かっていた。
彼女が何故、あんな狂気染みた奇行を演じてみせたのか。
構って欲しい位でそんな事をする女じゃないなんて俺が一番知っている。
ただ、理解は出来たけど納得出来なかった。
どうしようもなく危ない事をして、痛い女になって、俺が二度と会いたくなくなるように決意させようなんて…
そうさせているのも全て俺だ。
俺達は俺達をどう扱って良いのかずっと分からない。正しい答えがない。
彼女は玄関で唇を噛み締めて立ち尽くしていた。昔から涙を見せない女だ。
泣き虫のくせに強がりで強情で。
もう一生顔も見たくない、消えろって、そんな言葉を待っている…
だから俺は引き寄せて、Tシャツの中に閉じ込めて、「帰るな」と言った。
小さく震えて謝り続ける。
そんな事で俺が見放すと思うな。
本当に馬鹿で異常で過剰で過激で、
でも時に世界一可愛くて安らぐ存在。
一緒になるつもりはお互いないけど、もう消えないで欲しいんだ。
そう、あの冬、いきなり姿を消したのはお前の方だった。
突然、何の前触れもなくあの部屋と俺を捨てたのはお前だ。
あれから何年経ったんだろう。
見捨てないでなんて初めて聞いた。
人生で一番腐っていた頃も、いつも俺を見捨てないでいてくれたのは…
答えはなくていい。それが答えだ。
余計な事考えんなよ、馬鹿野郎。
ボサボサの髪で彼女は笑った。
ぐちゃぐちゃなくせに幸せそうだ。
変な奴。俺も笑った。いつも通りだ。
始まりも終わりもない。
ただずっと繋がり続けてきた輪廻。
俺達の大好きな歌を大声で歌う彼女。
あぁーめんどくせぇ。
何で出逢ったんだよ。
今でも昨日の様に時が止まったあの日の事をお互い思い出せる。
とりあえずもうあんな事はするな。
…消えないでくれ。
近くなくても良い。近過ぎると壊す。
故意にお互いを遠ざけるとお互いが駄目になる宿命ってだけだ。
傍にいる事じゃなく、魂に逆らうな。
俺の瞳を逸らさずに見つめ返せ。
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